無題

 

神田の飲食店でバイトをしていた頃、毎日の様に終電帰りをしていた時期があった。その時自宅最寄り駅の北口のデパートの前で毎週同じ時間にギターをかかえてあぐらをかいているおじさんがいた。何曜日だったかは思い出せないけれど、通り過ぎる度にあ、またあの人だと思っていた。その人の歌を立ち止まってじっくり聞いたことはないが、私の好きなタイプの曲を歌っているわけではないというのは通りすがりでも十分にわかった。そのうち3回に2回くらいは隣にホームレスと思われるおじさんが座っていて曲の合間に親しげに話しているようにも見えた。数日前終電帰りにいつものようにその場所を通った時、そんな人がいたなぁとふと思い出した。たまたまその曜日じゃなかっただけであの人は今もあの場所で歌を歌っているのだろうか。ホームレスのおじさんは元気にしているだろうか。日常にあった規則的な出来事は自分の生活の変化に気づかされることがある。もしまた見かけることがあったら今度は立ち止まってみようと思う。