ホムンクルス

 

「7日間、あなたに生きる意味を与えましょう。」

 

彼はそう言って主人公に近づいた。

 

 

トレパネーション手術

頭蓋骨の一部を取り除くことによって第六感を覚醒させる。

 

 

彼はそれを研究している研修医だった。名前は伊藤。

派手な色をした髪と顔にはたくさんのピアス。

とても医者とは思えない風貌だった。

 

主人公は名越。

金はあるのに何故か車内生活をしている変人。

 

どうして金があるのにこんな生活をしているんだとホームレス仲間に聞かれた時、「有給を使ってホームレス生活がどんなものかを体験しているんだ。」と彼は答えた。

 

側から見ればとんだ変人である。

しかし彼は記憶を失っているようだった。

 

 

 

胡散臭い医師に胡散臭い人体実験の話を持ち出されたところで飛びつく人間はそうそういないだろう。

 

大金を積まれても名越には金がある為意味が無い。

報酬の入った封筒を突き返されると伊藤は呟く。

 

 

「第六感が覚醒すれば、記憶が戻るかもしれない。」と。

 

手術を受けても成功するのはかなり低確率。

名越はその中に該当する人間だった。

 

人の心の歪み、トラウマが可視化されてみえる。

伊藤はそれをホムンクルスと呼んだ。

 

ホムンクルスが見えるようになった名越は他人のトラウマを解放させていくが、やがて自分のトラウマとも対峙しなければならない状況に陥る。

 

彼は一体何者なのか、過去に何があったのか。

 

ここから先は映画を見て欲しいので割愛。

 

 

 

 

あなたにはトラウマがありますか。

 

 

 

私にはトラウマと呼べるほどのものはないが、消し去りたい過去はある。

 

人によってはそれがトラウマになるのかもしれない。

 

人の数だけ受け取り方や感じ方も存在して、

悩みやトラウマに対しても人によってはそんなのは大したことないと位置づけられてしまったり。

 

 

結局人々は見たいものしか見ようとしないし信じたいものしか信じない。

 

ホムンクルスが見えるようになった名越は心の歪んでいる部分こそが本当の姿であると気づいたのではないだろうか。

 

結果として妻の死に加担してしまった女性と結ばれる名越。

自らの手で手術を施す伊藤。

どちらも不気味なラストシーンだったが、その歪みこそがこの物語の本質なのである。