金木犀

2021.9.26.

23歳になった。その日はいつもと何も変わらない朝を迎えて、なんとなくボーッと過ごして、家を出る2時間前に身支度を初めた。秋をイメージしたおろしたてのワンピースに新しいブーツ。いつもより少し手の込んだメイクをして、髪を三つ編みに結んだ。女に生まれて良かったなと思うのは決まってこういう時だ。身支度を整えた私を見て夏らしい服に身を包んだ母は家を出る直前にも関わらず着替えをはじめた。着替えを終えた母を見るとさっきとは打って変わって秋らしいシックなワンピースになっていた。私と雰囲気を似せたかったらしい。私は着替えてきた母の服装の方が断然好きだった。一緒に家を出て電車に乗ってタクシーに乗って辿り着いたのは椿山荘。目的は金木犀をイメージした期間限定のディナービュッフェだった。金木犀を使った料理たちが並び金木犀の香りがするコスメを手土産に持たせてくれた。私は幼い頃から金木犀が好きだった。私にとって香りというのは記憶が結び付いているもので嗅ぐ度同じように過去にその香りを嗅いだ時の記憶が鮮明に蘇る。私の金木犀の記憶は小学校の帰り道だったり、公園で友達と鬼ごっこをしている時だったり、神社をお散歩している時だったり。なんら特別なことがあった訳ではないけれど金木犀の香りだけは懐かしい気持ちにさせてくれる。ディナーを終えた後は椿山荘の有名な庭園を母と2人で散歩した。私の金木犀の記憶にまた1つ今日の想い出が刻まれる。

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